結婚当初から、わたしは夫に「誕生日プレゼントは要らない」と、言い続けてきました。
だって、高いアクセサリーや洋服や香水を買ってもらっても、お金のない私たちの生活のことを考えると、まったく喜べそうになかったからです。
もし高額なもので、わたしの趣味ではないものを夫が買って来たらどうしよう! なんて……。
今から考えると、本当に可愛くない嫁ですね。
でも、新婚当時は本当にお金がなく、それからも出産、マイホームの購入と経済的に苦しい状態が続いたのです。
二人共働いていたので、誕生日はどこかで外食し、ケーキを買ってお家で食べる。
それでいいんじゃない?
と思って、誕生日のプレゼントはなしで過ごしてきました。わたしも夫にはなにもプレゼントを贈りません。
夫もそれで特に不満はないように思えました。
そんな誕生日が何度も過ぎました。
ある日のことです。
夫がいつも以上になんだか機嫌がいいのです。どうしたんだろう?
そういえばわたしの誕生日だけど、この間焼肉に行ったし、ケーキはもう買ってきちゃってるし……。
まあ、機嫌がいいならそれにこしたことはないわね! と食事の支度をしていると、突然……。
「はい、これ」
と薄いパッケージを渡されました。
みると、映画のDVDです。
「誕生日プレゼント!」
と、満面の笑顔で言うのです。
「うん。でもわたしこれ見た」
「知ってるよ! その映画何度もみてるし、原作の本まで買ってハマってるんでしょ!」
そうです。そのDVDは私の大好きなシリーズものの映画でした。
ああ……。
どうして……。
ショート版なの!!
と、口からこぼれ出そうになる雄たけびをこらえて、
「ありがとう!」と笑顔で応えました。
その映画には劇場用のショート版と、劇場では入っていないシーンが入ったエクステンデッド版があるのです。
わたしはもうその映画の超マニアでしたから、映画館に何度も足を運んでいて、ショート版はもう覚えるくらい見ていて……。
でも、それはひっそりと胸にしまっておこうと思います。
せっかく夫がわたしを気遣って、わたしが好きだった映画を覚えていてくれたのです。
時々、夫が「このDVD、パッケージ開けてないけど?」と思い出したように言うことがあります。
そんな時は、冷や汗をかきながら「もったいなくて見れないの〜」と、答えるようにしています。