それは失業期間中のことでした。職を求めて大手転職サイト複数に登録をして、ハローワークに足を運び、さらには職業訓練を受けるなどしても一向に進展がなく、焦りを通り越して諦めかけているときのことでした。
長年付き合っている彼女から旅行に誘われたのです。
失業期間中ではあっても、多少の貯えはありましたから、食うに困ることはなく、旅行に出るくらいの金銭的余裕が無いわけではありませんでしたが、気持ち的にそんな気になれず、旅行はおろか日帰りのレジャーさえ、ほとんど無縁になっているときでした。
そんな状況を察して、あえて旅行に誘ってくれたのです。
しかも、旅程はすべて組まれていて、宿泊先は彼女が勤務する企業が、従業員の福利厚生のために契約している会員制リゾートホテルでした。
彼女はそうすることで、単に私が宿泊費用を支払わなくて済むようにしただけでなく、払いようが無いように気を回してくれたのだなと思いました。
さすがにここまでされると、職が決まるまでは遊びはしないつもりでしたが、断ることも出来ません。
それで誘われたまま、すべて彼女にお任せの旅に出ました。
それまでの彼女との旅はすべて私がプランから練り、宿泊先を決め、費用も負担していました。
それが今回の旅ではすべて一変したわけです。
正直、どうなんだろうと思いましたし、時期が時期なだけにあまり乗り気ではありませんでした。
ところが待ち合わせ場所の京都に着くや、宿泊先のホテル差し回しの車がロータリーに待機しており、見慣れた京都の街に滑り出しました。
車は市街地を抜けると比叡山を上り始めました。30分ほどすると頂上付近のホテルに辿り着きました。
眼下に琵琶湖や大津が見渡せる素晴らしい景観です。その素晴らしい眺めに、うまく行かない再就職活動のことは、微塵も思い浮かばなくなりました。
翌日は比叡山を降りて、鴨川のほとりに建つ外資系ホテルに泊まりました。
ここから鴨川越しに見るの東山連邦の眺めは素晴らしく、前日宿泊した比叡山も一望に出来ました。
食事も美味しく、旅に出てつくずく良かったと思いました。
一人で考え込んでいたら間違いなく、気分転換に旅に出ることなど出来ませんでした。
彼女のプレゼントに心から感謝をした、2泊3日の京都旅行でした。